最近の活動



令和5年度色彩・意匠学部会夏季セミナー 公開講演会を開催しました。

 2023年度の色彩・意匠学部会夏季セミナーは、「色彩と意匠からみた琉球染織」をテーマに、202396日(水)・97日(木)に開催された。

1日目は沖縄県立博物館美術館おきみゅーで、公開開講演会と解説付き見学を行った。
講演1では、「色材からみる琉球染織」について、沖縄県立博物館・美術館 主任学芸員與那嶺一子氏より沖縄の風土で培われた多様な色材と色、色名の変遷のお話をいただいた。
講演 2 では、「意匠からみる琉球染織」について同館学芸員篠原あかね氏より琉球染織の独自性と魅力を具体的な作例を通じてお話いただいた。
講演 3 では、「芭蕉布−採繊・加工と繊維の色」について沖縄科学技術大学院大学サイエンステクノロジーグループ野村陽子氏より、芭蕉布の原材料の使用部位と作製工程で地色が異なることや、褐変、シークアーサによる漂白についてもお話いただいた。

2日目は首里城の見学、首里城から首里染織館Suikaraまでの街並み見学、また首里染織館Suikaraの首里織工房、紅型工房、首里織展示場で女将いのうえちず氏による解説付き見学を行った。
 4年ぶりの対面開催となり、参加人数は、公開講演会は40名、夏季セミナー見学会は19名であった。

参加者から、貴重なお話と見学を通じて知見が深まったと嬉しいコメントが得られた。






令和4年度色彩・意匠学部会 春季セミナー 公開講演会を開催しました。

SDGsは世界中のすべての人々の幸せを目指すための目標である。今回の講演会では、SDGsの取り組みの中で “今、私たちに出来ること”を、色彩・意匠学部会ならではの視点で考えてみたいと思い、「つくる責任、つかう責任、そして再生可能へ」をテーマに2題の講演を実施した。

講演1では、ブランディアのサービス名称で知られる潟fファクトスタンダードでSDGs推進ご担当の池田顕斗氏をお招きし、「ファッション企業によるSDGsの取り組み事例について」 のタイトルでお話をいただいた。講演内容は、ブランディア事業のご紹介、リユース事業の海外展開の背景、ファッション業界における衣料品廃棄の問題、ブランディアが今後目指すことなどで、企業による実践活動について貴重な独自の調査データなども示していただいた。

 講演2では、尚絅学院大学教授の玉田真紀氏をお招きし、「日本文化にみる古着活用のデザイン思考とプラットフォーム」のタイトルでお話をいただいた。大量生産・消費型の生活がこのままで持続可能だろうか、という社会問題に対し、周囲の環境や社会の仕組みとの関わりを考え、時代の課題を問う問題意識を持つことが重要になって来たことを提起された。「日本文化にみる古着活用」という視点から、過去から現代にかけ、生活者や商人が古着にどんな価値を見出して、活用して来たのかを紹介していただいた。近世以降から現代までの変遷を振り返りながら、行動の変革を起こすデザイン思考と、その基盤のプラットフォームの構築について深く考える講演となった。

 これから益々重視され伸びていく衣類のリユース・リサイクル事業について、企業における最新の実践例と、過去からの研究事例という2つの側面から学ぶ良い機会となった。また、オンラインということもあり遠方や非会員の方の参加も多く、学会や部会の活動を知っていただくことができたのも成果であったと感じる。



令和4年度色彩・意匠学部会 夏季セミナー 公開講演会を開催しました。

 
本講演では、DX(digital transformation)の視点から、デジタル画像の「光と色」を取り上げ、感性と物性の両面から、効果的なコンテンツの作成に関わる幾つかの切り口を紹介いただいた。
 講演1では、「多原色光源装置による色彩研究の紹介」をテーマに、名古屋市立大学大学院芸術工学研究科教授 辻村誠一氏に講演いただいた。モノの見え方と演色性の説明があり、そこから多原色照明によって太陽光に近い演色性を得られることや特別な色を際立たせることが可能なことが紹介された。逆に、演色性を意図的に低くした効果についてもお話しいただいた。色のコントロールについて新しい気づきを得ることができた。
 講演2では、「スマートデバイスを使った効果的な写真撮影」について、名古屋学芸大学メディア造形学部映像メディア学科講師 村上将城氏に講演いただいた。スマホとLightroomモバイルを使った自然光を活用した人物撮影、モノの撮影、風景の撮影のポイントとして、光の向き、背景、カメラ位置、構図(見え方、グリッド線の活用)などプロの視点から具体的お話しをいただき、すぐに役立つ切り口を教えていただいた。さらに、トリミング、角度修正、モノクロ、部分ごとのカラー編集、プリセットなど、カメラとPCで行っていた編集がスマホのみでできることを説明いただいた。
 講演3では、「色彩調和に関与する色差の検討」について、椙山女学園大学生活科学部生活環境デザイン学科教授 石原久代氏にアパレル分野の服装コーディネートにおける色彩調和について事例紹介をいただいた。また、色彩調和の検討データをディープラーニングによりモデル化し、AIシステムにつなげていくことを説明いただいた。
 DXが構築されつつある現在において、今回の講演会は、部会員をはじめ一般、学生の皆様など部会員数の3倍以上である100名以上の参加者があり、新たな刺激となる内容により盛会裏に終わった。



令和3年度 色彩・意匠学部会 春季セミナー 公開講演会を開催しました。

2021年度の色彩・意匠学部会春季セミナー(春季公開講演会)は、昨年度に引き続き新型コロナ感染症拡大防止のためにオンライン形式で、2022年3月4日(金)13時30分〜15時50分に開催された。

オリンピックイヤーとなった2021年度の春季セミナーは「スポーツと色」をテーマに、視覚、心理、規定からアプローチした講演、女子体操服に着目した講演を専門の先生方から伺った。

講演1では、 「スポーツに関する色彩雑話−視覚と心理と規格から」と題して、(一財)日本色彩研究所 常務理事の名取和幸氏に講演いただいた。講演では、オリンピックイヤーにふさわしく「五輪の色」の意味や規定、1964年に開催された東京オリンピックにおける色彩基準作り、五輪の色の色彩学的意味についてお話しいただいた。また、スニーカーの色と子どもの嗜好色との関係やキッズ向けスニーカーのカラーラインナップにかかわる話、サッカーユニフォームの色が色覚異常のプレイヤーや観戦者を混乱させることにつながる話など、多面的にスポーツと色のかかわりを学ぶ機会となった。

講演2では、 「女子師範学校・高等女学校における女子体操服」と題して、お茶の水女子大学 准教授の難波知子氏に講演いただいた。東京女子高等師範学校における女子体操服の変遷としてセーラー・ブルーマー型体操服やチューニック型体操服などを紹介され、貴重な現物資料写真を用いて丁寧に体操服の特徴を説明いただいた。また、高等女学校における女子体操服の変遷として明治30年代における袴の着用、明治40年代から大正期における袴の改良、大正半ば以降の洋服の採用などをお話しいただいた。日本における婦人服の洋装化の歴史の中でも女子体操服のデザイン変遷や特徴について学ぶ機会となった。

オンラインで開催したこともあり、遠方からの参加者も含め各地から41名のみなさまにご参加いただいた。スポーツと色とのかかわりについて多方向から学ぶことができ、有意義な講演会となった。




令和3年度 色彩・意匠学部会 夏季セミナー 公開講演会を開催しました。
今回の夏季公開講演会は、「生活の中の色彩とデザイン」をテーマに、建築や製品、自動車などさまざまな観点からみた「生活の中の色彩とデザイン」を3名の著名な講師の方々にご講演いただいた。
まず、講演1では「もう一つの木の家」と題し、広島女学院大学 人間生活学部 生活デザイン学科教授の細田みぎわ 氏により、集成材パネルや合板を組み合わせた素材作りからのデザインの発想や、廃材プロジェクトなどの地域連携活動では、サスティナブルな活動事例を説明いただいた。
講演2では「製品価値と色彩の関係性」と題して、色彩生活コーポレーション株式会社 ジェネラルマネージャー上席カラーコンサルタント 小澤 真紀子 氏は、製品と色彩の関係や効果について解説された。南部鉄器(岩鋳)のグローバルマーケティングの事例を元に色の重要性を再確認し、製品のカラーについて紹介された。
さらに、講演3では「自動車のカラートレンド-新たな価値創造と、自動車の色彩。」と題して、色彩生活コーポレーション株式会社 代表取締役 主席カラーコンサルタント 柏尾 浩一郎 氏が50年間の車のカラートレンドについて東京モーターショーの詳細な事例を元に解説され、意匠性と機能性について学ぶことができた。
今回の企画は、色彩やデザインが私たちの身近な生活に及ぼす影響について考えさせられる内容であり、当部会員だけでなく一般参加者にとっても、より身近な色彩と意匠を知る貴重な機会となった。


令和2年度 色彩・意匠学部会 春季セミナー 公開講演会を開催しました。

2020年度の色彩・意匠学部会春季セミナー「皇室と東京」は,新型コロナ感染症拡大防止のため,初のオンライン形式での開催となった. 今回は,「令和の御代」になり一年以上が経ち,現在も皇室そして東京に注目が集まっていることから,皇室ゆかりの建造物と生活様式,さらに建物と人間が織りなす社会と文化にスポットをあて,調査・研究,文献に基づく,建物と人間を多角的に捉えた講演を専門の講師の方に伺った. まず講演1では,「わが国の住宅の近代化にみる皇室の邸宅」と題し,東京家政学院大学現代生活学部教授の大橋竜太氏により,建築史研究と近代住宅,歴史的建造物の謂査・研究,皇室の邸宅から明らかになることの観点からお話しを伺った.皇室の邸宅研究にはどのように日本人の生活が洋風化してきたのかを探る糸口があり,現在のわれわれの生活にも繋がるという調査・研究に基づく内容にはとても説得力があり,皇室という存在を身近に感じた講演であった.また,現存する皇室(旧宮家)の邸宅や歴史的建造物には,私たちが訪れることの出来る施設もあり,今回の講演内容を胸に訪問,再訪を考えた参加者も多いのではないだろうか. 講演2は,「鹿嗚館の美慈識 描かれた鹿鳴館」と題し,東京家政学院大学現代生活学部教授の山村明子氏から,鹿嗚館での舞踏会を伝えているとされる錦絵『貴顕舞踏の略図』(楊洲周延 作)と当時の新聞記事,外国人による風刺画,諸文献を用いて「描かれた服飾」の疑問点を紐解いていく,解説がなされた.西洋化,洋装化という大きな動きの中で,当時皇族方をはじめ日本人がどのような意識を持って取り組んできたのか,それが現在のわれわれの衣生活に繋がっていることを考えさせられる講演であった. 今回のセミナーはオンラインの利点を活かし,各地から62名の方にご参加いただいた.家政学の分野を問わず,非会貝のみなさんも含め,大変興味深かったという感想も寄せられ,有意義な講演会となった.

令和元年度 色彩・意匠学部会 夏季セミナー 公開講演会を開催しました。

色彩・意匠学部会では,「東海地域の伝統文化の色彩と意匠」をテーマとして,2019年度第41回夏季セミナーの公開講演会を開催した. まず,講演1「日本の伝統芸能と色彩」では,伝承文化研究センター所長/元名古屋女子大学教授林和利氏より,能・狂言で用いられる色彩について,歌舞伎やその他のジャンルの伝統芸能と比べ,総論として能・狂言において神聖視されている「白」と祝言性を象徴する「緑」の重要性について解説された. 次に,講演2「美濃和紙の歴史,技術と展開」では,岐阜県産業技術総合センター繊維・紙業部主任専門研究員佐藤幸泰氏より,2014年世界無形文化遺産に登録された美濃和紙1300年の歴史・技術から現代における和紙繊維製品の技術までご講演いただいた. 最後に,講演3「長良川鵜飼の鵜匠装束」では,岐阜大学教育学部教授夫馬佳代子氏より,長良川鵜飼(皇室御用鵜飼)において鵜匠のみが着用できる装束の製作技術を一つの文化の伝承として捉え,作り手である鵜匠と独自の衣服形態や材料へのこだわりについてご講演いただいた. 会員に加え,学生の参加もあり97名の参加者を得て、盛況であった.東海地域の伝統文化についての知見を深め,今後のアパレル教育と文化の継承に役立つと考えられる.


平成30年度 色彩・意匠学部会 春季公開セミナーを開催しました。

今回の春季公開セミナーは、くらしに息づく京都のものづくりにフォーカスし、京都独特のものづくりとそれらに関わる色の楽しみ方について3名の京都の著名な講師の方々からご講演いただいた。 まず、講演1として「伝統素材「漆」を現代に活かす−MR漆を使った新規利用分野の開拓−」と題し 株式会社佐藤喜代松商店代表取締役の佐藤貴彦氏により、伝統工芸として使用される漆の歴史を含め、新しい精製法として、かぶれにくく、耐久性に優れた特徴をもつMR漆の精製について説明いただいた。 講演2では「菓子における色彩とにおひ」と題して、公益財団法人有斐斎弘道館代表理事 太田 達氏が菓子の概念、日本文化や信仰、コミュニティツールとしての重要性について解説された。また、文化継承・保存のため、伝統的な京菓子づくりや、茶会や展覧会なども開催し、付加価値をつけて伝統を繋いでいく、新しい茶の湯の有り方も紹介された。 さらに、講演3では「復活した希少染色技法「マドレー染」の活用−ビジネス展開に向けて−」と題して、京都女子大学家政学部准教授の青木美保子氏が希少染色技法であるマドレー染めの復興について解説され、実際に制作された作品を間近で見ることができた。 今回の企画は、地域文化の継承の中で色がどのような役割を持つかなど考えさせられる内容であり、当部会員だけでなく一般参加者にとってもまたとない有意義な機会であった。


平成30年度 色彩・意匠学部会 夏季公開セミナーを開催しました。

公開講演会「デザインにみる地域性ーファッション都市神戸ー」および見学会

8月21日

◆企画講演会
 講演1「神戸ファッションにおける おしゃれのイメージ」
  
                         神戸松蔭女子学院大学教授 徳山孝子氏

神戸港150年の歴史と洋服文化との関わりについて解説された.昭和初期の雑誌「ファッション」では,阪神間のセレプがモデルとなり外国のファッション情報がいち早く紹介されていたなど.神戸ファッションの歴史を知ることができた.また.ファッション雑誌の古書が紹介され,参加者が手に取って見ることができた.

 講演2「神戸タータンの誕生と今後の展望」
  
                         神戸タータン協議会会長 石田原弘氏

神戸の自然と街の風屎からイメージする色で構成された“神戸タータンWは,神戸を象徴するイメージデザインとして,織物やグラフィックデザインのかたちで様々なアイテムに展開され,地域活性化のために使用されている.本講 義ではカラーデザインの過程なども詳しく解説され,一般参加者から多くの質問が寄せられた.

◆アトリエ見学会:神戸元町にある帽子専門店マキシンの房を訪問し,万陣で使用されたものなど歴史に残る作品と,職人による手作業を解説つきで見学した.

8月22日

◆美術館見学会:神戸三ノ宮からパスで移動し,大塚国際美術館において,陶板で表現された世界の名画を解説つきで見学した.

参加者:家政学会貝17名.非学会員19名.総計36名


平成29年度 色彩・意匠学部会 春季公開セミナーを開催しました。

(一社)日本家政学会色彩・意匠学部会では、「今に生きる江戸東京の技・色・デザイン」をテーマとして、平成29年度春季公開セミナーを開催した。会場は、東京家政学院大学であり、講演1 「浮世絵にみる幕末から明治初期の色彩とデザイン」では、共立女子大学名誉教授 伊藤紀之氏より、多数の浮世絵資料を呈示しながら幕末から明治初期の色彩とデザインについて説明頂いた。また、研究テーマの発見方法についてもご教示いただき、知識を深めるだけでなく、研究者としての心構えも学ぶことができた。講演2「西欧の近代デザインとジャポニスム」では、愛国学園短期大学講師 畑久美子氏より、西欧の近代デザインとジャポニスムのかかわりについて、歴史的な流れとジャポニスムとかかわりの深い事象を取り上げながら説明頂いた。学生や初学者でもわかりやすい説明と多数の写真資料を呈示しながら西欧の近代デザインと日本のかかわりについて理解を深めることができた。「江戸銀細工の解説および体験」では、(有)日伸貴金属の銀師(しろがねし) 上川宗照氏・宗伯氏(伝統工芸士)より、伝統工芸品東京銀器の歴史について解説頂いた。伝統工芸品は伝産法により指定されており、“実用品で美術要素がある日本独自の工芸品”いわゆる〈用の美〉が重要とのお話しが心に残った。解説後、参加者各自が栞・指輪・ペンダントの銀細工実習を体験した。デザイン性豊かな独自の作品が完成し、江戸の技を体験することができ、充実した セミナーとなった。


平成29年度 「一般社団法人日本家政学会第2回家政学夏季セミナー」合同開催しました。

平成29年度は、「一般社団法人日本家政学会第2回家政学夏季セミナー」が開催され、実行委員会は日本家政学会の被服構成学部会、被服衛生学部会、色彩・意匠学部会、服飾史・服飾美学部会の4部会で編成された。セミナーの総合テーマは昨年度に引き続き“生活の質的向上を目指す家政学の世界”で、本年度のテーマは“オリンピック・パラリンピックがつなぐユニバーサル衣料の未来”であった。会場は長野市の信州大学教育学部で、平成2993日(日)〜4日(月)に2日間の日程で開催された。セミナーには90名を超える参加者があった。

1日目は各部会の企画講演会が2会場で行われた。総合スポーツメーカーの研究者、服飾史家、映像制作者をはじめ、各界でご活躍の6名の講師の方々から、オリンピック・パラリンピックに関連するご講演をいただいた。講演後は、それぞれの部会企画(被服衛生学部会、色彩・意匠学部会、服飾史・服飾美学部会、被服材料学部会、被服構成学部会)が行われた。

2日目は公開講演会が開催された。ユニバーサルデザインをキーワードに、ロボティクスやカラーユニバーサルデザインなど4名の専門家を講師に招き、シンポジウム、パネルディスカッションが行われた。

 お昼には全体情報交換会がフジヤ御本陣で行われ、格式のある会場で美味しい昼食をいただいた。とても和やかな雰囲気の会であった。

午後のエクスカーションは、信州大学繊維学部 Fii、上田を訪ねるコース、真田十万石の城下町松代見学コースの二手に分かれ、初秋の信濃路を満喫した。


◆企画講演
 「参加型の映像伝達表現としてのプロジェクションマッピング」
                           NODE-LAB 主宰、名古屋産業大学 河村 陽介 氏

 
 河村氏は「NODE-LAB」を主宰され、創作活動も行なっている映像制作者である。プロジェクションマッピングは、ここ10年ほどで広まった映像表現方法である。2016年のリオデジャネイロオリンピックの閉会式では、参加型プロジェクションマッピングによる東京オリンピックの紹介が行なわれ、注目を集めた。この講演では、創作活動の事例が数多く示され、プロジェクションマッピングを“参加性”の視点でお話しくださった。河村氏のワークショップでは、参加者同士の意見交換や発想・協創を行なうことが大切にされる。そして完成の喜びが共有されることや、反省点の共通認識なども、参加者にとって価値のある経験になると述べられた。

質疑応答では、被服分野の学びへのプロジェクションマッピングの応用などにも話しがおよび、今後への期待が膨らんだ、本部会企画ならではの講演内容であった。




                                                


◆公開講演

「カラーユニバーサルデザイン」

                 日本女子大学   佐川 賢 氏

 

佐川氏は、産業技術総合研究所で長年、色彩やカラーユ二バーサルデザインの研究に携わってこられ、日本女子大学でも教鞭をとっておられる。本講演では、まず地図や路線図を例に、日常生活における色の役割と色情報の大切さ、スポーツ観戦等でのユニフォームや観客席にみるシンボルカラーと、選手やファンが感じる色の楽しみ方などが具体的に話された。しかし、残念ながら、こうした色情報が正しく伝わらない、利用することができない、カラーユニバーサルデザインの対象者として、高齢者、色弱者、ロービジョン者、全盲視覚障害者を挙げ、カラーユニバーサルデザイン視点による問題点や留意点が示された。さらに、それぞれに正しく色の情報を伝え、選択・識別できるようにするための、色使いのポイントやデザイン上の工夫などが分かり易く解説された。


講演後、会場の参加者からは「もう少しお話しを聞きたかった。」などの声が多数聞かれた。カラーユニバーサルデザインがより身近に感じられ、理解することの大切さと関心が深まった、貴重な講演となった。

今年度は、被服系4部会企画の「第2回家政学夏季セミナー」が開催されたため、例年行なわれている色彩・意匠学部会の夏季セミナーは開催されなかった。家政学夏季セミナーの開催日も例年より遅かったため、部会員の参加が少なかっ 
たのが残念であった。しかし、セミナー第1日目の夕方は、
色彩・意匠学部会の情報交換会を善光寺近くの『弥生座』で行ない、信濃料理(?)に舌鼓を打ち、少人数ながら大いに盛り上がり、楽しい時間をもつことができた。次年度の第39回夏季セミナーには、多くの部会員のご参加を願っている。そして、今年セミナーにご参加の部会員のみなさん、ありがとうございました。



平成28年度 色彩・意匠学部会公開講演会ならびに第38回夏季セミナーを開催しました。

平成28年度 日本家政学会色彩・意匠学部会の公開講演会ならびに第38回夏季セミナーが平成28年8月21日(月)〜22日(火)に2日間の日程で開催された。今回はセミナーテーマを「企業のデザイン」と題し、公開講演会,見学会を企画した。参加者は延べ 42名であった。

第1日目の公開講演会はイトーキ東京イノベーションセンターSYNQAを会場に、3名の講師をお招きして行われた。ライオン(株)開発研究本部の包装・容器研究所の中川 敦仁氏、(株)イトーキ 先端研究統括部 統括部長 大橋 一広氏、本部会員でもあり日本カラーデザイン研究所 プロジェクト推進部 副部長 滝沢 真美氏によって、ご講演いただいた。一般参加者の中には食品の容器にかかわる専門家なども参加され、活気ある公開講演会となった。

第2日目の見学会では、午前中にイトーキ東京イノベーションセンターSYNQA内の見学、午後には道明組紐のギャラリーおよび工房見学と組紐体験を行った。


1)講演1
「デザイン案が容器になるまで」

講師:ライオン(株)研究開発本部 

包装・容器技術研究所 副主席研究員 中川 敦仁氏

 パッケージデザインについて実物に触れながら講演がなされ、外見のデザインのみならず、保管や輸送中の強度についても配慮する事、少しの突起が実際の使用時の利便性につながるなどパッケージに対する理解を深めた。


2)講演2
「協創するワークプレイスのデザイン」

講師:(株)イトーキ 先端研究統括部 統括部長

   大橋 一広氏

ワークプレイスに関するスペースデザインについての提案があり、新しいオフィスの在り方やひいては教場についても考えさせられる内容であった。


3)講演3「アジアにおける色彩文化比較と日本の色」
講師:日本カラーデザイン研究所 プロジェクト推進部
    副部長 滝沢 真美氏

同じアジア人でも色彩や図柄の好み、色彩イメージなどは国によって差違があるため、商品の色彩戦略には国により違えていく必要がある事など興味深い内容であった。


4)見学1 イトーキ東京イノベーションセンター

SYNQA 1F〜3F見学

イトーキ東京イノベーションセンターSYNQAの見学に先立ち、株式会社イトーキ先端研究統括部の小笠原豊氏より説明をいただいた。その後、2グループに分かれて1F〜3Fの見学会を行った。
1Fは落ち着いたカフェ空間や企画展示、書籍展示などのコミュニケーションスペースが設けられており、オフィス内外のコミュニケーションを活発化させる工夫が随書になされていた。2Fではプロジェクトワークを加速させる様々な機能を備えたプロジェクトルームやサロン、セミナースペースを見学した。3Fはオフィスであり、イトーキのワークプレイスに対する考えを実践・実現する場ともなっていた。


5)見学2    道明組紐 

本店ギャラリーと工房の見学

 
道明組紐の上野本店におけるギャラリーにおいて、道明三保子氏より多種多様な色彩や技法で作成された組紐をご紹介いただいた。あわせて、組紐の歴史や実際に組紐になるまでの工程について工房内を見学しながら説明いただいた。



6)実習 組紐体験


丸台を用いた奈良組による組紐づくりを体験した。参加者はそれぞれに台の前に座り、12玉の糸を斜めに交差させながら組む作業を繰り返して組紐を作成した。今回、作成した組紐は携帯ストラップに加工したが、現在は帯締めや羽織紐をはじめ、ネクタイやベルト、バッグなどにも組紐の美と技が広く活用されているとの説明がなされた。

  

           
上野公園での集合写真


 あいにくの台風で足元の悪い中をご参加いただき有難うございました。この度の夏季セミナーの講演・見学では、様々の側面から企業におけるデザイン戦略についての現状を知るだけでなく、産学協同への展開を示唆し、新しい刺激と興味創出が期待される内容でした。また、見学体験では伝統的な組紐について知識を深めることが出来ました。本セミナーが今後の教育や研究のヒントになれば幸いです。お世話になりました関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

   (夏季セミナー実行委員一同)



平成27年度 色彩・意匠学部会公開講演会ならびに第37回夏季セミナーを開催しました。

平成27年度 日本家政学会色彩・意匠学部会の公開講演会ならびに第37回夏季セミナーが平成27年8月27日(木)〜28日(金)に2日間の日程で開催された。今回はセミナーテーマを「色彩・意匠の感性と科学 −広がる可能性−」と題し、公開講演会,見学会を企画した。参加者は延べ52名であった。

第1日目の公開講演会はキャンパスプラザ京都を会場に、3名の講師をお招きして行われた。テキスタイルデザイナーとしてもご活躍されている金沢美術工芸大学教授の大高 亨氏、感性の計測あるいは定量化についてご研究されている京都工芸繊維大学大学院教授 の佐藤 哲也氏、本部会の部会長も歴任された郡山女子大学教授の武井 玲子氏によって、それぞれに異なる側面から色と感性とにアプローチする話題を講演いただいた。フロアの一般参加者からも次々と質問が挙がり、活気ある公開講演会となった。

第2日目の見学会は、京都の伝統の技と感性に触れる見学会として、唐紙の唐長修学院工房の見学、唐長三条インテリアサロン、千總ギャラリーの見学(自由散策)、京友禅染体験工房での型友禅の染色実習を内容に実施した。

<プログラム内容>
 平成27年度 日本家政
●8月27日(木) 会場:キャンパスプラザ京都 第4講義室
 12:30〜    受付
 13:00〜13:10 挨拶
 13:10〜14:20 講演1「私にとっての布と色    
          金沢美術工芸大学 大高 亨氏
 14:30〜15:45 講演2「色を通して見るヒトとモノのかかわり」
          京都工芸繊維大学大学院教授 佐藤 哲也氏
 15:50〜16:30 講演3「被服の着用と洗濯による色の変化」
          郡山女子大学教授 武井 玲子氏
 17:00〜17:40 役員会
 18:00〜20:00 情報交換会 (京都センチュリーホテル)

●8月28日(金)見学場所:京都市内
  9:00〜    京都市営地下鉄「修学院工房」
 10:00〜12:00 見学1 唐長 修学院工房
 12:30〜13:30 昼 食 三井ガーデンホテル京都
 13:30〜14:45 見学2 唐長三条インテリアサロン千總ギャラリー 等
 15:00〜    実習1 古代友禅株式会社 
 16:00〜    解散
1)講演1 「私にとっての布と色」 講師 大高 亨氏 (金沢美術工芸大学)

 講師の大高氏によりテキスタイルデザイナーの立場から、自身の作品における布と色について、あるいは企業や産地との開発サポートの仕事から布と色とについて講演された。さらに東北の染織品について実物資料も交えて丁寧に解説された。

                       

2)講演2 「色を通して見るヒトとモノのかかわり」 講師 佐藤 哲也氏(京都工芸繊維大学大学院)

佐藤氏は感性工学の視点から色を表す、あるいは定量化することから応用されるさまざまな色の可能性について話題豊富に講演された。その中で、家政学的視点の重要性についても触れられた。

 

3)講演3 「被服の着用と洗濯による色の変化」 講師 武井 玲子氏(郡山女子大学)

武井氏により生活者自身に身近な衣服と色について、アパレルの製造から衣生活における洗濯管理に関わる潜在リスクとクレームの現状、新素材等への対応から、今後の課題までを示され、アパレル製品のリスク管理におけるリスクコミュニケーションの重要性を講演された。

 

4)見学1 唐長 修学院工房

唐紙の老舗として江戸時代から現在まで約400年唐紙制作を続ける日本で唯一の唐紙専門工房に伺った。見学に訪れた修学院の工房では12代目当主の千田誠次様から解説をいただいた。唐紙の版木の数々を、その意匠の一つ一つについて説明下さり、唐紙制作のデモンストレーションも行って見せてくださった。

          

5)見学2 唐長 三条インテリアサロン

       千總ギャラリー など(自由散策)

 今日市内中心部、三条室町界隈は古くから繊維産業の中心として栄えてきた。ここに唐長三条インテリアサロン、唐長がインテリアを手掛けたスターバックス、老舗の和装メーカー千總のギャラリーがある。昼食後、これらを自由散策にてご覧いただいた。

 

6)実習1 京友禅染体験工房 古代友禅株式会社
                

伝統的な着物の柄や模様で京友禅染(型染)の実習を行った。型紙と素材を重ねる際の説明を受けた後、1枚の型紙に対して1色ずつ、染料を浸みこませた刷毛で刷り、型紙を変え、同じ作業を繰り返して色を重ねていく。色を重ねるたびにだんだんと目的のデザインに近づいていった。最後に自分の銘を筆で書いてオリジナルの風呂敷が完成した。これまでにもセミナー他で何度となく京都にお越しのことと存じますが、この度の夏季セミナーが参加者の皆さまの今後の教育や研究のヒントになれば幸いです。企画段階から細かなご配慮やアドバイスをいただきました先生方、お世話になりました関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

        (夏季セミナー実行委員:大澤香奈子

 詳細はこちらをご覧下さい。

平成26年度 色彩・意匠学部会 春季公開セミナーを開催しました。

(一社)日本家政学会色彩・意匠学部会では、「ファッション研究における色彩イメージの検討法」をテーマとして、平成26年度春季公開セミナーを開催しました。

まず、講演1「ファッション分野において色彩イメージを取扱う研究のポイント」では、名古屋学芸大学教授石原久代氏より、調査資料作成の基本となる色の表示方法、調査法としてSD法と一対比較法を中心に提示資料と実験条件における注意点、データの解析法として因子分析と統計解析などについて講演されました。

次に、講演2「デザインシミュレーションソフトウェア4Dbox」では、株式会社トヨシマビジネスシステムP&E事業部西日本支店支店長杉山俊輔氏より、本ソフトウェアの歴史からソフトの特徴、企業での導入状況と活用事例など貴重な内容が講演されました。

そして、演習1「オリジナルデザインと配色作成及び製品シミュレーション」では、同インストラクター楠木恵子氏を講師として、本ソフトウェアを用いたデザイン演習を行い、作品を転写紙に印刷するなど最先端の技術を体験しました。
本セミナーは、卒論を始める学生や色彩関係の研究者の指標となり、さらに、最新の技術を講演と演習によって体得したことにより、今後のアパレル教育と研究に役立つと考えられます。



    石原久代教授による講演


       (株)トヨシマビジネスシステム杉山俊輔氏 楠木恵子氏による講演と演習

 平成25年度 色彩・意匠学部会公開講演会ならびに第36回夏季セミナーを開催しました

 平成25年度 日本家政学会色彩・意匠学部会の公開講演会ならびに第35回夏季セミナーが平成25年8月22日(木)〜23日(金)に2日間の日程で開催された。今回はセミナーテーマを『機能性、色彩とデザインそして表現へ』と題し、公開講演会,見学会を企画した。参加者はのべ57名であった。

 第1日目の公開講演会では、神戸松蔭女子学院大学を会場に3名の講師をお招きしておこなわれた。神戸に位置するアシックススポーツ工学研究所の所長であり、スポーツ工学の第一線でご活躍されている西脇剛史氏、金城学院大学ファッション工房で障害者・高齢者のおしゃれ支援に尽力されている金城学院大学教授 平林由果氏、長年ファッション教育の分野で活躍されている本部会員の夙川学院短期大学名誉教授 橘喬子氏によって、各分野の最先端の話題を講演いただいた。フロアの一般参加者からも次々と質問がなされ、活気ある公開講演会となった。

 第2日目の見学会は、わが国最大の先染綿織物産地である兵庫県西脇市を訪れ、播州織工房館、西脇情報未来館、旧来住家住宅、糸染工場、整理加工場を見学した。

1)講演1 「スポーツ衣料の視点から」〜アスリートのための高機能ウエア設計
  講師 西脇 剛史氏 ((株)アシックス スポーツ工学研究所)

  ロンドンオリンピックのアスリートウェアについて、スポーツソックスの機能設計、高速水着の機能設計、着圧シミュレーションシステムの開発事例をご紹介いただいた。一般消費者の知ることのない最先端のアスリートウェアの設計について、たくみな話術と分かりやすい説明で楽しく学ぶことができた。アスリートが着用する高速水着をお持ちいただき、実際に手に取って学ぶ貴重な機会をえることができた。

2)「授業としてのファッションショーへの取り組み」〜企画と実践の方法
  講師 橘 喬子氏 (夙川学院短期大学)

 授業としてのファッションショーについて、その方法論を学ぶ機会は少ない。教員・デザイナーとしても活躍されている専門的立場から、ショーの企画・実践のポイントと、複数の授業と関連させて教育効果を高める方法を、映像を交えながら詳しく解説していただくという貴重な講演であった。また、ファッションショーの画像等を納めたCD-ROM資料を後日郵送でご提供いただいた。

<プログラム内容>

●8月22日(木) 会場:神戸松蔭女子学院大学
 12:30〜    受付

 12:45〜13:15 部会打ち合わせ会

 13:30〜14:50 講演1「スポーツ衣料の視点から」
               〜アスリートのための高機能ウエア設計
           (株)アシックス スポーツ工学研究所所長 西脇 剛史氏

 15:00〜16:20 講演2「授業としてのファッションショーへの取り組み」
               〜企画と実践の方法
           夙川学院短期大学名誉教授 橘 喬子氏

 16:30〜17:10 講演3「おしゃれ支援活動について」 〜あきらめずにおしゃれを
           金城学院大学教授 平林 由果氏

 19:00〜21:00 情報交換会 (六甲山ホテル)

●8月23日(金)見学場所:兵庫県西脇市
 10:00〜    六甲山ホテル出発

 11:00〜12:00 見学1 播州織工房館,西脇情報未来館、旧来住家住宅

 12:00〜13:00  昼 食 梅吉亭

 13:00〜14:00 見学2 東播染工株式会社

 14:00〜15:00 見学3 播州織工業協同組合

 16:00〜    新神戸駅、三ノ宮駅にて解散



3)講演3「おしゃれ支援活動について」〜あきらめずにおしゃれを
  講師 平林 由果氏 (金城学院大学)

 ユニバーサルデザインは本部会が追究し続けている研究テーマの一つで
ある。おしゃれが人の心身を活性化する可能性についての研究結果とともに、金城学院ファッション工房のおしゃれ支援活動についての事例をご紹介いただいた。高齢者・障害者対応のサンプルを実際に手に取りながら、商品の特徴についての解説を聴くことができた。

ファッション工房のオリジナル商品を手に取る参加者


4)見学1 播州織工房館、西脇情報未来館、旧来住家住宅,

 のこぎり屋根の古い織物工場を再利用した播州織工房館は、先染織物の生地や糸、産学連携ブランドや産地企業のオリジナルブランドによる播州織製品を扱うアンテナショップである。館内の展示ブースでは播州織の歴史が紹介され、大型織機の展示・実演も行われている。あふれんばかりの色とりどりの織物に心を奪われ、時の経つのも忘れるようであった。


                       播州織工房館での集合写真



播州織オーダーメイドシャツ専門店である西脇情報未来館は、旧来住家住宅の敷地内に位置する。旧来住家住宅は国登録有形文化財である大正時代の高級民家である。播州織工房館ともども古い町並みの景観を残した風情ある一帯を楽しむことができた。




            


 旧来住家住宅(国登録有形文化財)離れでの昼食



5)見学2 東播染工株式会社見学

 先染織物は、織糸を先に染め、織工場、整理加工場を経て完成する。東播染工株式会社は染色・製織・加工部門を持つ一貫工場であるが、今回は糸の染色工程を見学させていただいた。長年にわたって蓄積されてきた糸のカルテは約10万色にも及ぶ。カラーマッチングを駆使して作られた色糸のサンプルは圧巻であった。


6)見学3 播州織工業協同組合

 播州織工業協同組合では織り上がった生地に加工を施し、用途に応じた特性・性能・風合いを付加し、商品価値を高める整理・加工の工程を見学させていただいた。毛焼き、マーセライズ加工、防縮加工等、多くの工程を経て製品となることを改めて実感することができた。




                            


工場の熱気の中で解説を聴く


真夏の工場内はどちらも熱と蒸気で過酷な状況であったが、それ以上に熱いハートで我々に解説して下さったご担当の方々と、この見学会のためにお骨折りいただいた公益財団法人北播磨地場産業開発機構の足立様、工房館の見学をコーディネートして下さった播州織デザイナーの国米利美様に感謝の意を表したい。そして、ここで得られた知識を教育・研究に多いに役立てたいと思う。

                                      (文章 夏季セミナー実行委員:花田美和子)



平成24年度色彩・意匠学部会夏季セミナー公開講演会を開催しました

 平成24年度(社)日本家政学会色彩・意匠学部会の公開講演会ならびに第34回夏季セミナーが平成24年8月23日(木)〜24日(金)に2日間の日程で開催された。今回はセミナーテーマを『生活に活かす!色彩・意匠学の現在(きょう),未来(あした)』と題し、公開講演会,見学会を企画した。参加者は、のべ34名であった。

 第1日目の公開講演会は東京家政学院大学を会場に、私たちの“生活(くらし)”のなかでも色彩・意匠学に関連の深い、ファッション,照明,そして被服教育の「今」をとり上げ、色彩・意匠学ならでは切り口で講師の方々にご講演いただいた。講師には、企業の第一線でご活躍の読売新聞東京本社 高橋直彦氏、パナソニック株式会社 岩井彌氏のお2人に加え、本部会員の名古屋学芸大学 石原久代氏、名古屋女子大学 小町谷寿子氏をお招きし、テーマに沿ったまさに“旬”なお話しを伺うことができた。

 第2日目の見学会は、平成24年一番のスポットといっても過言ではい「東京スカイツリー」の見学から始まり、昼食は、江戸の味を再現した『江戸エコ行楽重』に舌鼓をうち、明治期を代表する西洋木造建築「重要文化財 旧岩崎邸」の見学まで、東京の今昔を満喫した内容であった。何度となく足を運んだ《東京の街》をタイムスリップして行き来したような・・、そんな感覚さえ覚えた一日でもあった。

<プログラム内容>

◆8月23日(木) 会場:東京家政学院大学

  12:00〜    受付

  12:30〜13:00 部会打ち合わせ会

  13:20〜14:40 講演1「新聞メディアから見た2012年ファッション事情」
           読売新聞東京本社 高橋直彦氏

  14:50〜16:10 講演2「新光源&節電時代の照明」
           パナソニック梶@ 岩井 彌氏

  16:20〜17:00 講演3「理解しやすい被服学のためのe-ラーニングの利用」
           名古屋学芸大学  石原久代氏
           名古屋女子大学  小町谷寿子氏      

  17:30〜19:30 情報交換会(フレンチ レストラン chez olivier)

◆8月24日(金) 見学場所:東京スカイツリー・楠公レストハウス(昼食)・旧岩崎邸

  8:30〜     アルカディア市ヶ谷 前出発 (全行程マイクロバス)

  9:30〜11:30  見学1 東京スカイツリー,浅草自由散策

 12:00〜13:00   昼 食 楠公レストハウス

 13:30〜15:00   見学2 重要文化財 旧岩崎邸

 15:00〜      東京駅へ 解散

1)講演1「新聞メディアから見た2012年ファッション事情」
  講師:高橋直彦氏 (読売新聞東京本社)

 海外コレクションの取材から、メディアを通して配信されるまでの過程を実際のコレクション映像を交えながらリアルに解説していただいた。近年のモード史をふまえたうえで見る現在のファッション業界の動向、紙面から見る2012〜13年秋冬ファッション傾向など、新聞ならではの凝縮された情報分析は説得力のあるものだった。



2)講演2「新光源&節電時代の照明」
  講師 岩井 彌氏 (パナソニック株式会社)

 「LED(発光ダイオード) 照明=省エネ」が世の中の認識となりつつある今日、本当にLEDは省エネなのか。私たちが生活で求める快適空間と省エネをLED照明で両立させることを可能にさせるための照明の知識、そして現在の照明需要の中心となっているLED照明の技術動向を専門的立場から詳しく、分かりやすく解説していただいた。




3)講演3「理解しやすい被服学のためのe-ラーニングの利用」
  講師 石原久代氏 (名古屋学芸大学)、小町谷寿子氏(名古屋女子大学)

 LMS(ラーニング・マネージメント・システム)を利用した被服関係科目の学習について、「システム概要」「実践例」の2部構成で報告がなされた。e-ラーニングにおけるいくつかのコンテンツも紹介され、被服関係授業の横断的な繋がりと、学生評価による学習効果の報告もあり、被服教育面からも期待のもてる内容であった。




4)見学1 東京スカイツリー見学,浅草自由散策

 2012年5月22日に開業した電波塔、自立式鉄塔としては世界一の「東京スカイツリー」の見学を行った。東京スカイツリーは高さもさることながら、ライトアップや装飾の随所に日本の伝統技術がほどこされていることから、見どころ満載のスポットである。第1展望台まで足を伸ばした参加者も多かった。帰りには東京スカイツリータウンの商業施設「東京ソラマチ」でショッピングを楽しんだりと、夏の暑さを忘れるほどの密な時間を過ごした。

            *東京スカイツリー第2展望台からの風景
             (晴天ではあったが、夏特有の煙ったような東京の空)

5)昼食 楠公レストハウス『江戸エコ行楽重』

 楠公レストハウス 安部憲昭料理長の解説付きで、江戸時代の料理書を参考に再現された『江戸エコ行楽重』をいただいた。江戸時代は循環型社会といわれ、食文化の面でも生ゴミを肥料にするなど、現代のエコライフに繋がる「生活の知恵」が溢れた時代でもあった。当時の庶民にとってはハレの食事であった行楽重をいただき、現代の食材と江戸時代の調理法の織りなす江戸の味にふれ、献立・調理の見識を新たにした。

         
       安部憲昭料理長            江戸エコ行楽重              食事の風景

6)見学2 重要文化財 旧岩崎邸見学

 公開10年目をむかえた「重要文化財 旧岩崎邸」の見学を全行程解説付きで行った。明治期の上層階級邸宅を代表する西洋木造建築であるジョサイア・コンドル設計の旧岩崎邸は、1896年(明治29年)に竣工された。建築様式や天井装飾・アーチ・使用されている金唐革紙など細部の意匠・装飾まで特徴的であり、説明を伺うことでより理解を深めることができた。最近では、テレビドラマの撮影などにも登場する“お屋敷”といえば、うなずく方も多いと思われる。広大な屋敷の中に身を置き、ふと当時に想いを馳せた一瞬(ひととき)であった。


               
                           旧岩崎邸前での集合写真


                                      (文章 夏季セミナー実行委員:井澤尚子)



・平成24年度色彩・意匠学部会春季セミナー公開講演会を開催しました

 平成24年度セミナーの一環として「生活に活かす!色彩・意匠学の現在(きょう)・未来(あした)」を主旨として春季セミナー公開講演会を開催しました。古都奈良を背景に歴史にみる色から、ファッションの似合う色まで「色彩の魅力」をテーマに講演して頂きました。

 ◆ 期 日 :平成25年3月9日(土)
 ◆ 会 場 :なら工芸館(奈良市阿字万字町1−1 TEL 0742-27-0033)
 ◆ 内 容 :11:00〜12:30 講演1
          講師 赤膚焼窯元 日展会友 大塩 正氏
          テーマ「古代の色〜陶芸に関わる色〜」

         12:30〜13:00 工芸館見学

         13:00〜14:00 昼食および休憩(各自負担)

          14:00〜15:00 講演2
          講師 稲垣 有美子氏(部会員)
          テーマ「似合う色を提案してー10年間のセミナー体験から」

         15:00〜15:30 質疑応答&意見交換会


 講演1 講師:赤膚焼窯元 日展会友 大塩 正氏「古代の色〜陶芸に関わる色〜」

 古代ギリシャ、エジプト、中国、韓国などの陶器の歴史を紐解きながら、陶器の色はどのようにして作られるのか、土による発色の違いや焼成による違いについて詳しく解説していただいた。自然釉では長石、木炭、ワラ灰の三角座標の頂点を100%としてその割合によって色相・明度・彩度に微妙な違いが生じることや、土の違いによって割合が同じであっても色は違い、酸化焼成ではやさしい色に、還元焼成では強い色になるなど陶器の色は様々な条件によって作り出されていて、顔料の色との違いに、陶器の色の奥深さと難しさが理解でき、大変興味深い講演であった。

   
                             講師:大塩 正 氏             
                            (赤膚焼窯元 日展会友)


 講演2 講師:株)彩花 代表取締役 稲垣 有美子氏(部会員)
      「似合う色を提案してー10年間のセミナー体験から」

 ファッションコーディネートは自分表現であり、相手とのコミュニケーションに繋がる大切な印象評価である。色、形、素材など日々進んでいくファッション商品を買って着こなす消費者に「着こなしについて悩んでいる人がいる」と感じたことから氏の事業が始まり、その10年間のセミナー経験を生かし、3つの視点からアドバイスをいただいた。1)パーソナルカラー 2)体型分析―13の体型分析によるお悩み解決法 3)ファッションセラピー個性学を取り入れたファッション心理分析を解説していただき、実際に有志モデル3名の各々の似合う色を分析していただいた。色によってその人の個性や美しさが表現され、色の魅力を再認識した講演であった。

    
                            講師:稲垣 有美子氏    
                          (株)彩花 代表取締役 部会員)

  一般の参加者もたくさん参加していただき、公開講演会として成果が得られた内容の講演であった。

  参加者: 家政学会会員:11名、非会員:13名 計:24名


                                      (文章 春季セミナー実行委員:橘 喬子)



・平成23年度春季講習会を開催しました

 3月3日土曜日、桃の節句に色彩・意匠部会の春季講習会を開催しました。

   テーマ:  「ビジネスの現場から見た色彩研究の需要」

   ◆月 日: 平成24年3月3日(土) 11:00〜16:00

   ◆会 場: 日本女子大学百年館1階 百101教室

   ◆スケジュール:
    11:00〜12:30
    講演1  株式会社日本カラーデザイン研究所  滝沢真美
    「色彩業界の全体像の説明、調査分析手法ならびにソフトウエア、流行情報誌、研究事例等の紹介」  

    12:30〜14:00  昼食  
       
    14:00〜15:30
    講演2  DICカラーデザイン株式会社 川村雅徳氏
    「カラービジネスネットワークの活動状況、海外マーケットに対するアプローチ手法、研究事例の紹介」
                                     
    15:30〜16:00  質疑応答&意見交換会


 内容は、「ビジネスの現場から見た色彩研究の需要」をテーマに、会員で、株式会社日本デザイン研究所に所属する滝沢真美と、DICカラーデザイン株式会社の川村雅徳氏をお招きしての講演会です。講師は2名とも、民間の色彩コンサルティング企業に勤務しており、色彩業界の現状や、団体ごとの手法や得意分野の紹介、企業における色彩研究の現状や求められているテーマで講演しました。

                     
              講師: 滝沢 真美 氏             講師: 川村 雅徳 氏
         (株式会社日本カラーデザイン研究所       (DICカラーデザイン株式会社)


                         
                              会場の様子


 会場となった日本女子大学では、卒業生で絣作家の福井貞子氏による展覧会「藍に生きて―福井貞子絵絣展」が成瀬記念会館で開催されておりましたので、昼休みに作品展も鑑賞することができました。

 参加された13名の先生方は、皆様熱心にお話を聞いてくださいました。講師の川村氏とは、昼休みに意見交換を含め、いろいろとお話をすることができました。

 今後も共同で行える研究テーマや、色彩や意匠の分野で社会貢献できる研究テーマなど、皆様と交流しながら探りたいと思います。
                                          (文章 春季講習会担当 滝沢真美)

<事務局・お問い合わせ>
 〒102-8341 東京都千代田区三番町22番地
          東京家政学院大学 現代家政学科 1704室(井澤)
          TEL/FAX : 03-3262-2749


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